顔面レベル100の幼なじみと同居なんてゼッタイありえません!
飛行機はグングン高度を上げていく。
小さな窓から見える陸地は、どんどん離れていく。
旋回する機体。
耳にキンと痛みが走る。
あっという間に、地上よりも青い青い空の方が近くに来てしまった。
太陽の陽射しがキラキラと雲を照らしている。
泣きそうなくらい。
こんなに天気がいいから……
もし空がどんより曇っていて、その絨毯から雨粒を落としていてくれてたら……
あたしは涙を流せていたかな……?
ほんとに……
本当に、日本を出てしまう。
要……
ほんとにあんたって自分勝手なヤツ。
勝手にキスするし。
勝手に甘い声を出すし。
勝手にいなくなるし……
ほんとに、要が大好きだったな。
《皆様、ただ今シートベルト着用のサインが消えましたが、飛行中は突然揺れる事がございます。皆様の安全の為、座席にお着きの際には常にシートベルトをお締め下さい》
機内アナウンスが聞こえると、隣に座っていたママが急に席を立った。
「間に合った~。 ちょっとトイレ行ってくるわ」
「……は?」
そそくさと立ち去るママ。
すっごく不自然なんですけど?
一体何なんだ……
トイレくらい飛行機乗る前に行っておいてよ……
通路を挟んで、隣の席に座るパパに視線をうつす。
「ママはトイレが近いんだ」
そう言って、なんだか意味深にニヤッと笑うパパ。
うッ……
なにそれ?
なんだか二人とも変だよ?
「パパは飲み物頼んでくるから」
不気味な笑みを浮かべたまま、パパはどこかにちらっと視線を移すと乗務員がいる場所へ歩いていってしまった。
ねえ……
飛行機の中にいる時ってそんなに歩き回っていいの?
あたしはそんな事を思いながら「はあ」と大きく息をついた。
アメリカかあ……
アメリカンドリーム……
あたしも何か見つけられるのかな?