オオカミ系幼なじみと同居中。
楽しそうに、座席に用意されていたパンフレットなどをパラパラとめくる要の隣で呆気にとられていると、そこへ両手にカップを手にしたパパ達が戻ってきた。
パパは自分の席に熱いコーヒーの入ったカップを置くと、その隣にも置いた。
ママは、迷わずそこへ腰を下ろす。
そしてパパは、笑顔であたし達を見た。
「いや~意外に混んでて時間かかったよ」
「ほんと。でも……ちょうどよかったみたいね?」
要の存在を驚く事もなく見て、ママはクスッと笑った。
……え?
「はい。……でもほんとによかったんスか?俺までお世話になっちゃって」
「それを言うなら僕らの方だよ。 要君にもやりたい事があっただろう」
「あ……いえ。それはどこでも出来ますから」
……待ってよ?
なんだか会話。 おかしくない?
妙に親しそうに話す、要と……あたしの両親。
そして、その両親は要がここにいることを初めから知っていた感じだし?
あたしだけ、状況わかってないじゃないッ!!
「これからも未央を頼むな?」
「まさせてください。いい女にしてみせます」
「あら、頼もしい」
こらーーーー!!!!
「ちょっと……どうゆう事なの? あたし何も聞いてないッ!!」
え?
と言うように、あたしを振り返る三人。
うぅ……あたし、悪くないでしょ?
思わずその視線にたじろいでしまう。
パパとママは困惑したようにお互いに顔を合わせ、要は面白そうに頬を緩めた。
そして、ママが口を開いた。
「――だいぶ前に決まってたのに……聞いてなかったの?」
「え?き……聞いてないって。 ねえ……要?」
同意を求めるように要に視線を向ける。
要は、ほんの少し笑みを零してるだけだった。
そして綺麗な唇がピクリと動いた。
「俺は 知ってた」