オオカミ系幼なじみと同居中。

「12月に入ってすぐに聞いてたんだ。おじさん達が未央をアメリカへ連れて行こうとしてるのは」

「……な、なんで黙ってたの?」



胸がドクドクと音を立てて騒ぎ出した。


知ってたんなら……
どうして教えてくれなかったの?

それを知って、あたしとあんまり一緒にいてくれなくなったの?


どうせ、離れ離れになってしまうから……



不安だった。

あの時……優しい旬に頼ってしまいそうだった。



どうして?



頭の中では“どうして”の言葉がグルグルとすごい勢いで回っていた。


要はガシガシと髪いじると、その手を首元で止めた。
そして、チラッとあたしを見るとまた視線を逸らしてしまった。
「んーー」っと何か考えるようにひとしきり眉間にシワを寄せた要は、小さく息を吸うと再び顔を上げた。




「俺さぁ……ほんとの事言うと……すっげぇ不安だったんだわ。
未央はまた俺の前からいなくなる。
今までずっと一緒にいたから、急に不安になった。
未央のいない時間が考えられないくらいに、俺の生活には未央がいた。 
焦って、イラついて、どうしたら引き止められるかって悩んだ。

でさ、俺思ったんだ。
ある考えにたどり着いた。

別に未央がここにいなくちゃいけないんじゃない。
俺が未央といたいんだ。
だから俺が一緒に行こうってさ

そんで、アメリカ行くためにめちゃめちゃバイトして資金稼ぎした。
今まで何かにこんなに一生懸命になった事なかったから
誰かに見せるのも嫌だったし、ましてそれが女の為だって……
かっこつかないじゃん?」


そう言うと、要はまた手元のパンフレットに視線を落とした。
その頬が、ほんのり赤く染まっているのは気のせいだろうか?


そうだったの?

そんなふうに思ってくれてたの?

だから、ずっと帰りも遅くて……
ずっと会えなくて……



それなのに……あたし……あたし……




「……要……」




< 293 / 301 >

この作品をシェア

pagetop