オオカミ系幼なじみと同居中。
「12月に入ってすぐに聞いてたんだ。おじさん達が未央をアメリカへ連れて行こうとしてるのは」
「……な、なんで黙ってたの?」
胸がドクドクと音を立てて騒ぎ出した。
知ってたんなら……
どうして教えてくれなかったの?
それを知って、あたしとあんまり一緒にいてくれなくなったの?
どうせ、離れ離れになってしまうから……
不安だった。
あの時……優しい旬に頼ってしまいそうだった。
どうして?
頭の中では“どうして”の言葉がグルグルとすごい勢いで回っていた。
要はガシガシと髪いじると、その手を首元で止めた。
そして、チラッとあたしを見るとまた視線を逸らしてしまった。
「んーー」っと何か考えるようにひとしきり眉間にシワを寄せた要は、小さく息を吸うと再び顔を上げた。
「俺さぁ……ほんとの事言うと……すっげぇ不安だったんだわ。
未央はまた俺の前からいなくなる。
今までずっと一緒にいたから、急に不安になった。
未央のいない時間が考えられないくらいに、俺の生活には未央がいた。
焦って、イラついて、どうしたら引き止められるかって悩んだ。
でさ、俺思ったんだ。
ある考えにたどり着いた。
別に未央がここにいなくちゃいけないんじゃない。
俺が未央といたいんだ。
だから俺が一緒に行こうってさ
そんで、アメリカ行くためにめちゃめちゃバイトして資金稼ぎした。
今まで何かにこんなに一生懸命になった事なかったから
誰かに見せるのも嫌だったし、ましてそれが女の為だって……
かっこつかないじゃん?」
そう言うと、要はまた手元のパンフレットに視線を落とした。
その頬が、ほんのり赤く染まっているのは気のせいだろうか?
そうだったの?
そんなふうに思ってくれてたの?
だから、ずっと帰りも遅くて……
ずっと会えなくて……
それなのに……あたし……あたし……
「……要……」