オオカミ系幼なじみと同居中。
まだ、朝も早いためか、学校に登校しているのは朝練の生徒くらいだった。
穏やかな朝――
いつもとなにも変わらない。
ただ、違うのは……
ずっと熱くなった頬が冷めない、あたしだ。
「桜井?」
ぼんやりと空を眺めていたあたしは、急に名前を呼ばれてハッと我にかえった。
そして、声の方へ視線を向けた。
「はよ。早いな……お前ってなんか部活入ってた?」
あたしの視線の先にいたのは首にタオルを巻きつけたジャージ姿の、旬だった。
「藤森くん……おはよ。 今日はたまたま早く来ただけだよ」
陸上部の旬は、毎朝欠かさず朝練に出ているようだった。
「毎朝大変だね」
「そうでもないよ、ただ、もうすぐ県大会だからな。」
そう言って、今まさに練習をしているグランドに目を向けた。
あたしも、旬の視線の先を追った。
「……しゃッ!」
「……」
そして丁度、3年の先輩が高飛びを成功した時だった。
旬は、小さくガッツポーズを作って見せた。
あたしは、それさえもまだ夢の中にいるような感覚だった。