オオカミ系幼なじみと同居中。


あたし達の視線の先にいたのは要だった。

今、来たところなんだ……。



ドキンっ



大人しくしてくれていた心臓が、再び騒がしくなった。



ドクン
ドクン



――……胸が痛い



何、これ。





あたし―――……



前から、友達と数人で歩いてくる要に、もの凄く動揺してる。



さっき、旬に会った時嬉しかったけど、こんなにドキドキはしなかった。



どんどん近付いてくる。


どうしよう。どうしよう。



何も言わず出てきた事怒るかな?



前に進むことも、逃げ出すことも出来なくてあたしはその場に立ち竦んでいた。


なんの話をしているんだろう。
とても楽しそうに笑いあっている。



あと数メートル……


あと数センチ……


あと…………






「……」




え?





要は何も言わず通りすぎた。

あたしの事なんて、最初から知らないみたいに。

すれ違う瞬間、一瞬だけこっちを見た気がしたのは、ほんとに気のせいだったんだ。




この痛みはなんだろう?


胸がキリキリと音をたてて痛んだ。



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