オオカミ系幼なじみと同居中。


「なにお前、もしかして妬いてんの?」



要はあたしを見た。
ゆっくり近付いてくる。
ジリジリとその距離を縮める要に、あたしは同じように距離をとる。

無造作にセットされた髪の間から、あたしをとらえる要の瞳の奥になにやら怪しい光を感じる。


「きゃ……」


不意に足元に何か当たる感覚がして、ガクンと体が倒れていく。
チラッと視線だけを向けると、ソファの背もたれがあってそれ以上逃げられないとわかる。


顔面蒼白。
一気に血の気が引くのを感じて、あたしは要に視線を戻す。


「逃げらんないぜ」と言うかのようにフンと鼻を鳴らす要。
今度は、体中が心臓になったかのように脈を打つ。

それと同時に耳にまで熱を感じた。


ひぇ~!
だ、誰か……助けてぇ!

あたし絶対食べられるッ



「俺の事、気になる?」



要がなぜかお腹を空かせた狼に見えてくる。



「……っなに言ってんの? あ、あたしはただ……誰なのかなって思っただけだし。
そ、それにっ……」


「……お前、うるさい」



あたしの言葉を遮るように、要の手が髪に触れる。

呆れたような楽しむような、意地悪な笑みを浮かべる要。
楽しんでる……完璧楽しんでるって。


でも、そのふてぶてしい態度とは裏腹に、要の大きな手はあたしの頬を優しく包んだ。



ドキン!!


え……え!?


じっとあたしの顔色を伺う要。


な……なによ?
もう、限界だ。心臓もたない。 なんなのこの状況はっ。


目眩がしそうになって、あたしはもう一度文句を言おうと口を開きかけた時だった。




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