オオカミ系幼なじみと同居中。
触れてもいないのに、要の手が傍にあるってだけなのに。
苦しい……。
何で?
こんな事で息が出来ない。
あたしは思わずギュッと目を閉じる。
――……ゴト
何かが目の前を通過した。
『何、作んの?』
へ?
その言葉に目を開けると、要はペットボトルを出してお茶を飲むところだった。
な、なんだ……
お茶取っただけか……
ホッとしたのか、何なのか複雑な感情に駆られた。
要を意識しすぎてしまっている事がとても恥ずかしくなって、あたしは要の質問には答えず、中から挽肉と玉葱を取り出す。
バカみたい、バカみたい!
何を期待してたんだろう。
べ、別に、あたしは要の事なんてどうでもいいわけだし。
要の事、き、嫌いだしっ。
『……なんかあったの?』
要はお茶をしまいながらあたしの様子を見て言った。
たぶんあたしの顔は真っ赤になってる。
『べ、別に、何もないよ?』
あたしはあえて明るく笑顔を作った。
この気持ちが気づかれないように……。
『……あ、そ』
そう言った要の表情ははっきりとはわからなかった。
それだけか……。
きっとあたしの事なんて興味ないに決まってる。
要は『先に風呂入る』と部屋から出て行ってしまった。
あたしは玉葱を切っていた手を止めた。
あたしの髪に触れ、キスをした要。
いたずらっぽく笑ってあたしを見る要。
そして、ずっと好きだった旬。
あたしはどうしたいんんだろう?
胸の中に、抜けないトゲが刺さってしまったように、さっきからずっと胸が痛んだ。