黒姫
「心配かけたくないだの言って“家族”には言うなと我が儘なくせに、俺には心配かけるんだな」
「……ごめんなさい」
心に容赦なく突き刺さる言葉に、瑞姫は俯いて謝るしかできない。
「まあ、今更だがな」
「否定できない……」
思えば、昔からそうだった。
透とは10年の付き合いになるが、同い年のくせにいつだって瑞姫の一歩前を歩いていた。
今だってそうだ。
だから瑞姫は、透に頼ってしまうのだ。
「心配かけてごめん」
「それは聞き飽きた」
「……心配してくれてありがとう」
「どういたしまして」
無表情な顔が、少しだけ緩んだように見えたのは、きっと気のせいじゃない。