黒姫

「心配かけたくないだの言って“家族”には言うなと我が儘なくせに、俺には心配かけるんだな」
「……ごめんなさい」


心に容赦なく突き刺さる言葉に、瑞姫は俯いて謝るしかできない。


「まあ、今更だがな」
「否定できない……」


思えば、昔からそうだった。
透とは10年の付き合いになるが、同い年のくせにいつだって瑞姫の一歩前を歩いていた。

今だってそうだ。
だから瑞姫は、透に頼ってしまうのだ。


「心配かけてごめん」
「それは聞き飽きた」
「……心配してくれてありがとう」
「どういたしまして」


無表情な顔が、少しだけ緩んだように見えたのは、きっと気のせいじゃない。

< 105 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop