黒姫

教室から教室へ移動する僅かな時間、沈黙を作らないためか、鈴羅は取り留めのないことを話す。


例えば、自分のこと。



「私ね、クォーターなの。母方の祖母がイギリス人」
「ああ、だから金髪なんだ」
「うん。たまに『染めてるんじゃないか』とか言われるんだけどね」



例えば、クラスのこと。



「加藤君の後ろの席の子、私の中学の時からの親友なの」
「ああ、あの子」
「毎日毎日賑やかで……西田真奈(にしだ まな)って言うんだけど」



明るく話し続ける鈴羅に、薫は素直に思う。

いい人だな。

さりげなくクラスの情報を教えてくれたりするあたり気も利くし、可愛いし、素直で真面目。

そりゃあ人気もあるだろう。

< 12 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop