黒姫
寒いやら冷たいやらで、表情筋すら動かすと痛い。
そんな中で出来るだけ痛みを少なくしようとすると、必然的に無表情になるわけで。
それが、瑞姫を押さえ付けている男子のひとりのカンに障ったらしい。
「この期に及んで無表情か、よっ!」
声に合わせるようにして、彼の膝が鳩尾に減り込んだ。
堪らず顔を歪める。
(……痛い)
痛い、痛い。
理不尽な痛みに、どうしても過去を思い出しそうになってしまう。
顔を歪めたまま、唇を噛んだ。
今、この理不尽な暴力を受けている間に過去がフラッシュバックしたら、そうしたらきっと堪えられない。