黒姫

その雰囲気に誘われるように、薫は尋ねた。

何気なく口をついた、それだけの言葉だった。



「飯島さん。1番前の真ん中の席で、長い黒髪の女子って、どんな子?」



まさか、それだけで場の雰囲気が一変するなんて、欠片も考えていなかった。



「……ああ、黒瀬ね」



鈴羅の口調から覇気が消えた。
先程までの明るい声は消え失せて。



「……黒瀬?」
「うん。黒瀬瑞姫」



碧色の瞳から、楽しげな光が消えた。

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