黒姫
黒瀬瑞姫という少女に、嫌悪に近い負の感情を抱いている。
それにも関わらず、彼女が嫌われていることを肯定するのが申し訳ない……。
そんな矛盾した感情を、鈴羅は持て余していた。
鈴羅は瑞姫と同じ小学校に通っていた。
クラスが同じだった年もある。
だから、彼女は知っている。
小学生の時、瑞姫が親に愛されていなかったことを。
度々、身体中に虐待の跡を匂わせて、いつも何処かしらに傷を負っていた。
それなのに、痛々しい見た目をしながら、それでも瑞姫は笑っていたのだ。
精一杯笑って。
まるで笑うのを止めることで周りを心配させてしまう、と言わんばかりに。
痛々しいのは、何よりもその笑顔だったのに。