黒姫

黒瀬瑞姫という少女に、嫌悪に近い負の感情を抱いている。
それにも関わらず、彼女が嫌われていることを肯定するのが申し訳ない……。

そんな矛盾した感情を、鈴羅は持て余していた。




鈴羅は瑞姫と同じ小学校に通っていた。
クラスが同じだった年もある。


だから、彼女は知っている。

小学生の時、瑞姫が親に愛されていなかったことを。


度々、身体中に虐待の跡を匂わせて、いつも何処かしらに傷を負っていた。

それなのに、痛々しい見た目をしながら、それでも瑞姫は笑っていたのだ。

精一杯笑って。
まるで笑うのを止めることで周りを心配させてしまう、と言わんばかりに。

痛々しいのは、何よりもその笑顔だったのに。

< 15 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop