黒姫
言葉の意味が解らない程子供にはなれない自分が憎かった。
咄嗟に気付いてしまったせいで、恐怖は何倍にも膨れ上がる。
……何とか、ならない。
もしかしたらここ5年、初めてまともに恐怖を感じた。
……違う。
ここ5年、瑞姫は常に恐怖から護られていた。
恐怖の感じ所が、他人と違うことを考えても、瑞姫は確かに“家族”に護られていた。
今は、誰もいない。
いるのは最早恐怖の対象にしかなり得ない男達だけ。
「――っ!!」
怖い。嫌だ。助けて。
叫ぼうとしたのに、身体は動かない。