黒姫

それでも、その姿を見て安心する自分がいた。


私の親は中々私に構ってくれないけれど、それでもあの子よりは全然マシ。

鈴羅の家は、当時あまり裕福ではなかった。
今でこそ人並みの生活だが、その時は家の窓が割れようと、家中の電気が切れようと、そこに注ぐだけのお金はなかった。


だからこそ起こった、小さな優越感。
自分の心を守るための、ささやかな“生け贄”。



その優越感が崩された時の衝撃は、今でも忘れられない。

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