黒姫

ぐらり、と世界が歪む。
視界が歪む。

あ、泣いてる、と他人事のように思った。
涙を止めることが出来るほど、恐怖からは逃げられなかった。

嫌だ、怖い、気持ち悪い。


身体を捩った瑞姫の耳に、その時誰かの声が聞こえた。


「……おい」


聞き覚えのある、いつもより低い声。
その声が聞こえた瞬間、瑞姫の意識が一瞬飛んだ。

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