黒姫
恐らく今、瑞姫に“男”を近付けては駄目だ。
咄嗟にそう判断した香奈は、そっと瑞姫の身体を起こす。
自分と大して変わらない身長の瑞姫の身体は簡単に持ち上がった。
「お姉ちゃん、聞こえる?」
ゆっくりと、瑞姫を刺激しないように香奈が声を掛けると、虚ろな瞳をしていた瑞姫が、ハッとしたように香奈の名前を呼んだ。
「香、奈……っわたし、わた、し……、
う、ああああああああああああ!!!」
半狂乱の状態で絶叫した瑞姫をぎゅっと抱きしめて、香奈は宥めるように背を叩く。
「お姉ちゃん。大丈夫だよ。私がいるよ。心配しなくて良いからね……」