黒姫

それは、小5の終わりのことだった。

いつもより遅く登校してきた瑞姫は、いつもの痛々しい笑顔を取り払った無表情だった。


それなのに、無表情なのに、何処か幸せそうに見えた。
そんな彼女に、理不尽な怒りを抱いたことを、鈴羅は覚えている。


身体中の傷跡が消えたわけではない。
痛々しい見た目は、何ら変わりが無い。




それなのに、自分がとても虚しく感じた。
哀れだと思った。


そう思ってしまったあの日から、鈴羅は瑞姫が好きにはなれない。

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