黒姫

「お姉ちゃーん? パジャマ、ここに置いとくねぇ」


いつも通りのように聞こえる、それでいて目一杯心配してくれている上の妹の声に、見えていないことはわかっているけど、瑞姫は笑ってみる。


「ありがとう、香奈」


駄目だなぁ、駄目だなぁ……。

笑顔が歪んでいる。
笑えてない。

どうやったら、心配かけなくてすむんだろう。
これ以上心配かけたくないのに。

瑞姫が浴室から出て着替え終わったら、きっと香奈が待っている。
その時また心配させてしまうのは、嫌だ。


『俺は瑞姫を心配したい』


ごめんね、透。
やっぱり私、心配かけるの苦手みたい。

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