黒姫

二人分のおぼんを持って香奈が部屋を出てから数分。
控え目なノックの音がした。
続いて3日ぶりに聞く声が「瑞姫?」とドア越しに声を掛ける。


「透? 入ってよ」


返事を返すと、しばらくの間の後、がちゃりとノブが回った。
入って来た透を見て、瑞姫が目を丸くする。


「……何それ」
「見てわかんだろ、ノートだよノート」
「違うそうじゃない! 何で透が加藤のノート持ってんの!? 加藤うちのクラスじゃん! ていうか知り合いだったの!?」


思わず声を大きくした瑞姫に、透は「何だ、意外と元気そうだな」と小さく息をついた。

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