黒姫
疑いもせずノートを預けたところを見るに、随分と人が良さそうに見えるが、もしかしたら薫も動揺していただけなのかもしれない。
なんせテスト前、ノートがなくて勉強なんか出来るもんじゃない。
そこんとこの日程を薫が落とすとも考えられない。
「まあいいか、ありがと。コピー取ってくれない?」
「だからな、あー……別に会わないつもりだった訳じゃないし、香奈に言われなくても今日来るつもりだったし……」
ぶつぶつと呟き始めた透の言葉は“言い訳”らしい。
似合わぬ往生際の悪さに、瑞姫は思わず吹き出した。