黒姫
私は、何をしているんだろう。
確かに、黒瀬のことは好きじゃない。
ううん、嫌い。
でも、だからって、私が黒瀬のことを勝手に話していい理由にはならない、絶対。
だって私が黒瀬だったら、話されるのは嫌だから。
鈴羅と同じ小学校に通っていた人は、この学校のこの学年にはそういない。
鈴羅と瑞姫。
それから、隣のクラスの青野透(あおの とおる)くらいだろう。
つまり、そういうことだ。
瑞姫の過去を知る人間は、少ない。
わざわざ話すことではないし、易々と話して良い内容ではない。
わかっているのに、何故話しそうになったのだろう。
もしかしたら……私は、まだ黒瀬のことが羨ましいと思っているのだろうか。
両親に、家族に愛されている私が?
家族に愛されず、虐待を受けていた黒瀬を?