黒姫
そこまで考えて、鈴羅は緩く頭を振った。
これ以上考えていると、思考の渦から出てこれなくなりそうだった。
「……黒瀬はね、凄く愛想が悪いの」
嫌われている理由を話せば良い。
鈴羅の事情は、薫には関係無いのだから。
「どう話しかけても、ほんの一言、二言しか返って来ない。それも大概イエスかノーの返事だけで、他の言葉でも『嫌』とか『面倒臭い』とか……」
口に出してしまえば、大した理由ではない。
ただ、取っ付きにくいだけ。
「後ね、今年1番長い言葉が『勝手にどうぞ。私には関係ないでしょ』だったかな。流石にカチンと来るよね」
その言葉がどういう経緯で発っせられたものなのかなんて、もう忘れてしまったけれど。
そんなもんなのだ、嫌われる理由なんて。
大した理由もなく、人は人を嫌える。
「ふーん」と、納得したのかしていないのか、いまいち判断のつきかねる顔をした薫が、小さく笑った。
苦笑なのかもしれなかった。