黒姫
放課後、指名された私達以外に転校生の加藤も教室に残っていた。
正直、ここに残るなんて変な奴だと思う。
黒瀬は鈴羅と話している。
こうやって見ると、あの日鈴羅に叫び返した黒瀬とは別人のようだった。
冷静を通り越して冷淡に誤解を解いていく黒瀬は、何で今までこうしなかったんだろう。
別に、このタイミングじゃなくても誤解は解けたのに。
休んでいた1週間の内に何かあったのだろうか。
あったとしても、興味なんてないけれど。
ぼんやりと思考に耽っていた私の視界の端で、鈴羅が俯いた。
話を半分くらいしか聞いていなかった私には理由はわからなかったけど、咄嗟に手は動いた。
鈴羅の肩を支え、振り返った彼女に笑いかける。
弱々しく笑い返してきた鈴羅の肩を支える手に力を入れて、
大丈夫だ。
まだ私は黒瀬に直接手を出してはいない。
鈴羅の心根が優しくなかったら、私はきっと駄目だった。
道を踏み外さなかった、踏み外させなかった鈴羅に、全力で感謝した。