黒姫
勝手にお年頃な異性の部屋に侵入した挙げ句、暖房を付けベッドに寝転んで、完全にリラックスモードな那央に、瑞姫はあからさまな溜め息をついて見せた。
「16歳女子の部屋に勝手に上がり込んで寛ぐ19歳男子がどこにいる?」
「ここ?」
「言うと思ったけど年齢を考えようか那央兄」
自分で投げた鞄を那央から取り返し、机の傍に適当に置く。
寝転んだ体勢だけは改めたものの、未だベッドに腰掛けている那央に一言。
「着替えるから出てって」
流石の那央も立ち上がった。
「まあ、それなら仕方ないか」
「出てかなかったら殴ってたかも」
「酷いなぁ、瑞姫」
「当たりま……、っ!?」
当たり前でしょ、と言おうとした瑞姫は、その言葉を強引に遮られた。
グイッと腕を引っ張られ、身体が傾く。
気付くと那央の腕の中にいた。