黒姫
にこりと瑞姫は笑って、勢いよく透に飛び付いた。
完全に予想外だったらしく、抵抗無く透がベッドに倒れたため、図らずも瑞姫が透を押し倒す図になっていたが、お互いあまり気にしていない。
「私は少なくとも後4、5年は透に甘えるつもりだよ?」
ぎゅうぎゅうと抱き着きながら言うと、呆れたような、でも何処か安堵したような声で透は答えた。
「いつでもどうぞ? 可愛い妹」
優しく抱きしめ返されて、ああ透が那央兄に毒されて来ている……と瑞姫は苦笑した。
そうして、わざとらしく膨れっ面をして言う。
「妹違う! 同い年!」
――いつまでも私の拠り所でいてね、“お兄ちゃん”。
心の中で呟いて、やっぱり似合わないなと言い換えた。
「いつまでも私の拠り所でいてね、透」