黒姫
終章
葉桜になりかけた桜並木。
賑やかな声を立てて生徒たちが駆けていく。
「桜綺麗だね」
「もう散りかけだけどね」
「お花見し損ねた……」
「私は“家族”と行った」
この季節は高校に上がって2度目だが、入学当時よりも賑やかさが耳につかない。
BGMのように耳をすり抜けていく、その感覚が少し嬉しい。
「いちいち煩いな黒瀬ぇっ!」
「え、待ってよくわかんない今の私が悪かった?」
「当たり前だ馬鹿!」
「真奈も黒瀬も目立ってるよ」
「あはは、僕クラス見に行って来るね」