黒姫

こんなやり取りはあるものの、那央と瑞姫の関係は、あくまで兄と妹だ。

……否、この場合は義兄と義妹、というべきか。




天宮、という財閥がある。
日本有数の財閥で、世界にすら結構な影響力のある、天宮財閥。

そこの一人息子が、天宮那央……だったのだが、5年前に少し事情が変わった。


天宮夫婦が4人の養子を引き取ったのだ。
それぞれ血の繋がった家族に、複雑な理由を抱える4人の子供を。

瑞姫、透、香奈、里沙。

親から愛されなかった子供、親を失った子供。
はたまた、家族のために自らを犠牲にした子供。


そんな子供を、天宮夫婦は自分の子供のように愛して、可愛がった。




そんな訳で、那央と瑞姫は血が繋がっていない。
それどころか、兄弟姉妹誰一人として血の繋がりを持たない“家族”である。




……だから瑞姫の初恋の相手が現在の兄でも仕方がない、はずだ。
あくまで初恋、今は関係ないのだから。

ちなみに、2度目の恋は、まだ来ない。

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