黒姫
着替えを済ませ、鞄の中身を盛大に床にばらまきながら、瑞姫は明日の準備を始めた。
すぐ寝る訳でもないし、まだ早い気もしたが、どうせ勉強なんてしないのだ、こんなことはさっさと終わらせるに限る。
永遠に冬休みが続けば良かったのに、と誰もが1度は考えそうなことが、言葉になって瑞姫の口からこぼれ落ちた。
「あーあ、ずっと学校が休みだったらいいのに……」
「……瑞姫。何でもいいけど、もっと見た目良く準備出来ないのか?」
「ぎゃあっ!?」
突然掛けられた声に、思わず情けない声を上げた。
声の発信源に目を向けると、そこに立っていたのは瑞姫と同じ学校の制服を来た男子。
黒い前髪から覗く切れ長な瞳と目が合った。
「すっげぇ声」
「透……っ、いつ帰ってきたの? 遅いよ」
誰のせいだ、という言葉は、どうせ躱されるから言わないことにして、瑞姫は当然の疑問を口にした。