黒姫

透が部屋を出ていって数時間。
今度こそしっかりとノックの音がした。


「瑞姫。ご飯、できた」


里沙の声だ。
料理が“家族”の中で1番上手く、本人も料理好きなため、飯炊き係は大抵、里沙がしている。


「わかった、すぐ行く」




朝食は時間帯が中々合わず、小6の里沙と中2の香奈とは食べれない。
昼食も学校なので、当然ひとり……ちなみに昼食は、大抵パンだ。

だからなのか、夕飯だけは絶対に、どんなに遅くなっても5人揃って食べる。
今は仕事で海外に行っている“両親”も、1年前までは殆どの日を一緒に食べていた。



夕飯の時間は、香奈が話しまくって、瑞姫と透が相槌を打って、那央が茶々を入れて、里沙はたまに口を挟む。
それが毎日毎日繰り返されて。


「でさぁ、男子の反応がガキだなんだって……」



幸せを実感するのは、大抵この時間だ。

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