黒姫
ドスのきいた声に、思わず振り返る。
教室の扉を、たった今開け放った体勢で、瑞姫がそこに立っていた。
悪口を言われていた本人の登場に、教室がざわめく。
真っ直ぐに睨みつけてくる瑞姫の瞳に、思わず逸らしそうになった。
しかし、怒りや憎しみは膨らむばかりで。
「本当のことでしょ? だって、小学生の頃は虐待受けてたじゃない! 今はどうか知らないけど、でもそんなの本当の家族じゃないよ!」
「黙れ、って言ってるでしょ!」
「黒瀬に、家族なんていない!」
だから、だから私の方が幸せなんだよ。
なのに、何で私より幸せそうに見えるの?
「……何も知らないくせに! 何も知らないくせに、勝手なこと言うな!!」