黒姫

初め瑞姫は、クラスメート全員から悪意を向けられていると思っていた。

その考えは、ほんの1、2回、休み時間を挟んだだけで変わった。



瑞姫の左隣、左斜め後ろ、後ろの席は安泰だ。
恐らく好意はこれっぽっちもないが、痛いほどの悪意もない。


瑞姫がそう思った理由は単純だった。

授業中に、その3席からの嫌がらせが無かったことだ。

右隣からは消しゴムのカスを投げつけられ、前からは破かれたプリントに『死ね』と書かれて回ってきた。
席の多少離れた人からでさえ、教師の目を盗んで嫌がらせをしてくる。

さすがに斜め前の席から鋏が飛んできたことには肝を冷やした。

< 52 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop