黒姫

爪先を侵す冷たさに、思わず微かに表情が変わる。
もともとあまり良くない目つきを更に悪くしながら、水を撒いた人間を見上げた。


水を撒いたのは、女子2人。
片方が500ミリリットル入りのペットボトルを持っているから、それをひっくり返したのだろう。


「あー、失敗しちゃったぁ」
「あはは、ドンマイ」


笑う2人の声を、シャットアウトする。
今むきになって言い返しても、状況は悪化の一途を辿るだけだ。

流石に沸き上がった怒りを無理矢理押さえ付けて、瑞姫は無事だった鞄を抱いて、教室を抜け出した。


多分、1時間くらい寝れば、この怒りも収まるだろう。

< 57 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop