黒姫

視線が交わったのはほんの一瞬。ふたりはほぼ同時に目を逸らした。



そのタイミングを見計らったかのように、教師が口を開く。



「あー、加藤。君の席は、窓際から2列目の前から4番目だね」



その言葉に、生徒達が反応した。

静かだった教室が、打って変わって騒がしくなる。



「うわ、鈴羅(れいら)ちゃんの隣!」「羨ましー」「ずりぃぞ、転校生!」「俺と変わってくれ」「ばっかテメー、お前じゃ飯島(いいじま)には釣り合わねぇよ」



いくつか拾えた言葉から考えるに、薫の席は『飯島鈴羅』という女子の隣らしい。
更に、彼女は大変男子から人気らしい。
女子は女子で、彼女のことを悪くは思っていないようだ。



教師に軽く目礼し、指定された席に着く。

左隣、要するに窓際の席に座る女子生徒を見遣り、薫はああ、と納得した。

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