黒姫

「……っ!」


幸いにもおにぎりは食べ終わり、メロンパンは袋に入ったままだったので無事だった。
しかし、頭から被ったバケツ一杯の水は、髪と制服を重くするには充分過ぎる。
更に、先程の彫刻刀で切った左手の甲に水が染みて痛い。

跳ね飛んだ水滴が、机の脇に置いてあった鞄に降り注いだ。




「やだー、びしょびしょ」
「ていうか超汚い!」
「それ何の水?」
「トイレ掃除に使ってた水だって」
「きゃははっ! 黒瀬にはお似合いなんじゃない?」

「……ねえ」

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