黒姫
鈴羅から視線を外し、薫は名前を知らぬ少女を探した。
席は1番前の真ん中。
黒髪で、後ろからではわからないだろうが、瞳も黒。
そういえば彼女も美形だった、と薫は思い返す。
鈴羅を可愛いと言うのなら、彼女は綺麗だと言えば良いのか。
席を知っているので当然と言えば当然だが、例の女子生徒はすぐに見付かった。
生徒達の騒ぎには参加せず、ぼんやりと頬杖をついている。
気の抜けたようなその姿は、しかし何故か凛としていて。
それでいて、どこか寂しそうに見えた。