黒姫

何故、透の苗字を知っている?
何故、今このタイミングで透の名前を出した?

前者は、同じ学校、しかも同じ学年で隣のクラスともあれば、何とでも説明付けられる。

でも、後者は?
教師くらいしか知らないはずの、自分と透の関わりを、何故目の前のクラスメートは知っている?



「あ、やっぱり知り合いか」
「……どういうこと?」
「悪いとは思ったけど、鎌を掛けさせてもらったんだ。なんとなく、黒瀬さんと青野くんの雰囲気が似ていたから」
「……なんだ、そういうことか」



一瞬パニックを起こしかけた自分が馬鹿みたいだ。



「……とにかく、私はあなたに愚痴を吐く気は全くないから。助けを求める気もない」


きっぱりと意思を伝えて、瑞姫はさりげなく持ちっぱなしだった黒板消しを定位置に置いた。

黒板を消すために乗っていた教壇から降りて、自分の机に置いてあった鞄に手を伸ばす。

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