黒姫
第6章

グレードアップしている。


朝、下駄箱を取り敢えず開けてみて、瑞姫は思わず引き攣り笑いを浮かべた。

昨日は結局帰って来なかった上履きは、一応戻ってきてはいた。
戻ってきてはいたのだが、履ける状態ではない。


上履きの片足分は、何をどうしたのか、呆れを覚えるほど原型を留めていない。
最早上履きとは言えない、オブジェと言った方がまだしっくりくるだろう。
割と綺麗な切り口から見て、恐らくカッターか何か刃物を使ったのだろう。


もう片方は、これはこれで酷かった。
原型を留めてはいたが、側面には真っ黒になるまでの悪口がマジックで落書きされ、その更に上から赤で『死ね』の文字。
ついでにご丁寧に、中には画鋲が仕込まれていた。

いくら何でも、これは履けない。



明日からは、上履きを持ち歩こうと決めて、結局瑞姫は今日も事務室に行くハメになった。

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