二手合わせ



民家は、低い屋根で木造のがほとんどだった。

舗装されていない道、刀を持って往来する人が普通にいる。


「…ここは新撰組屯所だ」


そう言われて、『屯所』に連れてこられるまで、現実というのを見ざるを得なかった。




現実に打ちのめされた私は、一つの部屋に連れ込まれた。


「両手を出してくれ」

「……」

「はやく」


しぶしぶ、言われた通りに両手を出すと、縛られた。

え、もう、意味が分からない。


「縄がないから、俺の帯だがな。…ちょっと此処で待ってろ」


男はそう言って、出ていった。

私は部屋を見渡す。
広い和室の部屋の隅には、書物が積み重なっていた。


……題名が、読めない。
目が悪いわけではなく、何と書いてあるのか理解出来ない。
達筆すぎる。


することもなく、とりあえず座ろう、と思うも
両手を縛られたまま座るとバランスを崩しそうだ。


「立っておくしかなさそう…」


私は、ため息を一つ、ついた。



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