二手合わせ
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(side:恵梨)
埃っぽい。
コホッ、と咳をして、思う。
腕の拘束を外され、しばらくはあの男の部屋に居た。
そして、夜になると、もともと荷物置きとして使われていたらしい部屋に連れていかれ、『逃げるな、出るな』と忠告された。
私にとっては、刀を持っている人の忠告なんて、ただの脅しでしかなかった。
トイレ(この時代では厠というらしい)とかなら出ていくことが出来た。
屯所の内部を知られないようにとかで、目隠しされて連れていかれたけど。
…そんなに厳重に警戒しなくとも、私は方向音痴だから道とかあまり覚えられないのに。
そう思っても言えなかったけど。
それから、男の名が『永倉新八』ということが分かった。
名前だけなら、平成の世で聞いたことがある。