二手合わせ
2、暗鬼
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(side:副長)
文机に向かって、もう何刻経ったろうか。
俺は筆を置き、書き終えた書状を部屋の片隅に纏めて置く。
グッと伸びをして、肩の凝りをほぐす。
口にくわえたままの煙管から出る紫煙で視界が微妙に白い。
「換気すっか」
永倉とか山崎とかがうるせえしな。
煙たいっつって。
ガラッ、と障子を開けると、
「うおっ!?」
「おー、びっくりしすぎやないか?副長」
夜の色に紛れるような服を着た山崎が居た。
いや、普通にビビるだろーが。
夜特有の、生き物の気配が消えた静けさの中、
気配を消して待たれてちゃあ驚いて当然だ。
そう言うと
「俺は監察方なんやし、気配消せんかったらそれこそ生きてられんよ」
「…、そうだな」
敵情視察や、普通の町人に化けて仕事をする監察方は、いかに気配を自然に消せるか、いかに自然にその場に馴染めるかに命運がかかってる。