二手合わせ



抑えれない感情に任せて、言葉を連ねた。


「前にも言ったけど…何もしてないじゃない…。格好が怪しかったら、つかまえるんですか。出身地なんて、言えるわけなかった!私にだって分からないのに!」


どう言えば良かったの。
この時代は都道府県じゃなく、藩。

県名を言ったところで、伝わらない。


「出身地が…分からへん?どないなっとんねん…」

「本当のこと、言ったって…信じないくせに!そんな人達に全部喋れって!?喋ったって殺すくせに……話すわけないじゃない!」

「……恵梨ちゃん」


宥めるような山崎さんの声は聞こえないふりをした。


「殺されたくなかった、家族に、友達に、会いたいから、帰りたいから…。……なんでっ!!なんで私が此処に居なきゃ行けないんですか!?私、何もしてないのに…」


ボタボタと落ちる涙を拭う余裕もなかった。

タイムスリップした、って言えば良かったの?

信じないくせに。
信じたって、利用するだけのくせに。




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