二手合わせ
手探りでカバンからケータイを取り出す。
まだスマホに替えていないからガラケーのままなんだけど。
ケータイをパカッと開く。
電源…ついているんだろうか。
分からないから、閉じて、制服のポケットに入れた。
昨日着ていた着物は大きかったから着替え直した。
それに、この時代のものをあまり身に付けたくない。
物を食べないのもその理由だった。
「お父さん…お母さん…」
会いたい、帰りたい。
じわり、涙が滲む。
と、その時
「入るぞ」
永倉さんの声がしたあと、続いて障子が開く音がした。
「昼飯だ、食え」
「……置いておいて下さい」
「今、食え」
「………」
私だって、治すために食べなきゃいけないことも分かってる。
でも
何も見えない状態で
箸を持ち、食事をするのは難しいよ。
そう考える私の思考を察したのか
「食いにくいと思って握り飯にした」
と、永倉さんは言って、私にお握りを持たせた。
よ、用意周到…。