二手合わせ



あんまり急に食べても、と説得して、もう食べずにすんだ。


永倉さんはお膳を片付けに、部屋から出ていった。



ふぅーっと息を吐き出す。

食事中、ずっと居られるのは凄く息が詰まる。
気まずかった…。


そんな時から解放され、なんとなく手持ちぶさただったから、ポケットからケータイを取り出す。

そして開いて、触ってみる。

(あ、通話ボタンと電源ボタンと……「5」のボタンって…触ったらわかるように突起があるんだ…)

目が見えなくなって
そういうことに改めて気が付いた。

しばらく
そうやって触っていると


「……っ!!えっ!?」


ヴーッ、ヴーッ、と
ケータイが震えだした。


「ウソ……」


電話かメールかわからないから、とりあえず決定ボタンを押す…と


『……リッ…』


微かに声が聞こえたから、慌てて耳にケータイを当てる。


「も、もしもしっ!!」

『恵梨!!…え、ホントに恵梨!?』


聞こえたのは、聞き慣れた親友の声。

それを理解して
ケータイを持つ手が震えた。



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