二手合わせ

っ、ダメだ。
愚痴っぽくなってる。


「ゴメン、マキ。こんなこと言って…」

『…恵梨、あたしは信じてるから』

「――っ」


泣きそうになった。
信じてる、って言ってほしかったから。

此処に来てから
周りの人は私を疑心の目で見るだけだったから。


「ありがとう…マキ。信じてくれて」

『だって、恵梨が消えたの見てたし……友達の言うことは信じるっしょ』

「…あのね、帰れる可能性もあるの。今は無理らしいけど」

『そっか。じゃあ、待ってる』


その言葉を最後に、通話を切った。

アカネも言っていた。
今は無理だけど、帰れないこともないって。

あ、目が見えなくなったことを言うの、忘れてた。

でも…
下手に心配させるよりは伝えない方が良いかな。


ああ、でも
良かった。

元の時代との繋がりが全く切れたわけではなかったから。


嬉しさを噛み締めながら、ケータイを抱くように胸のまえでギュッと握りしめた。




まさか、
さっきの会話が聞かれていたとはつゆとも思わずに。