二手合わせ



これからどうしよう。
150年前が江戸時代ってことは分かる。

授業で習ったから。

大まかな事件も。



でも、この時代、この場所で誰がどのように暮らしているか、なんてわかるはずない。



「恵梨、恵梨」

「なに?アカネ」

「人間が来るよ」


アカネはそう言って、舞い散る桜の花弁に同化するように姿を消した。

…誰か来る、の?
逃げなきゃ、今の私の格好は、この時代には異端すぎる。


近くに落ちていた鞄を拾う。

その瞬間
強い風が吹き、下へ下へといっていた花びらが縦横無尽に舞う。


そして、カチャリ、と金属音と共に現れたのは


「誰だ…?」


大小の刀を腰に下げた、…侍。


「っ、!」


私は鞄を抱き抱えて駆け出す。

侍はハッとするほど鮮やかな水色――いや、浅黄色の羽織をしていた。

歴史に疎い私も、ドラマで見て、組織の名前だけは知ってる。


―――新撰組。




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