左利きの君へ
まだ、ドキドキしてる。
「フフッ。ごめんごめん!
なんか、可愛くなっちゃって♪」
かっ、可愛っ⁉
「"雨宮くん"!冷やかさないでっ!」
「あ。今、"雨宮くん"って言った」
彼は不機嫌そうにこっちに近づく。
やばっ!
「サクサクサークっ!」
慌てて連呼する。
「これからは、サクって呼んでね?
じゃなきゃ、チューしちゃうから」
彼は意地悪そうに微笑んだ。
サイアクっ。
「分かった?」
私は渋々、
「分かりましたっ」
すると、サクは嬉しそうに
左手でピースした。
「ねぇ。あまっ…サクって
左利き?」
あぶなっ!"雨宮くん"て
呼ぶところだったよ。
「そうだよ!字書くのも、
ケータイで文字打つのも、
ボールをつくのも
ぜーーんぶ左手っ!」
そういえばバスケの時も
左手でボールついてたな。
「へぇー。そうなんだ」
左利きって、なんか憧れたりする。