捕まっちゃって、奪われて。
*第1章*
最低なクリスマス
[side:Takuma]
「……バイバイ」
栗色の髪をふわっと靡かせ、
彼女は俺の手を離した。
「……っあれ?」
時が止まったような静止。
今、起こった事を理解するには
俺の頭じゃ少し時間がかかるようで。
『…逞、私の事、好き?』
『うん、好きだよ』
『……嘘つき』
むっと顔を顰めて、
繋いだ手にぎゅっと力を込める。
『…もっと愛して欲しかったよ』
目を細めて、手の力を緩めて、
また、力を込める。
『……別れよっか?』
ぐるぐると今この1分も間もない会話で、俺の全部が変わってしまった。
さっきまで隣で微笑んでいた大好きな俺の彼女は、自分から別れを告げて離れて行った。
静かに雪が舞い降りる、このクリスマスに。
積もった雪に足跡を残して。