捕まっちゃって、奪われて。
「……焦る?」
きょとん、と言った感じで首を傾げ、
「ああ…そうですね」
と納得する少女。
「それより、まずなんでこんなことしてるんですか?
これから私を犯すならもっと威嚇のある態度をとるべきでしょう。
それともただの誘拐ですか?
身代金なら望めないと思いますけど、私のその鞄に連絡先を書いてるものが入ってる筈なので勝手に見て結構です」
それを言ったきり、ふいっと視線を落とし、瞼を降ろす少女。
「えっ…と、じゃ……誘拐の方向で」
そう言って俺は、みっともない限りで鞄の中を漁り始める。
「……財布の中です」
「はっ、はい」
なんともギクシャクした雰囲気で、…なんていうか、俺…なにしてんのかな?
これ、誘拐犯と被害者の会話じゃなくね?
「あ、あった…」