捕まっちゃって、奪われて。
――【東雲柚鈴】。
「東雲…ゆ、ゆず…すず?」
「……」
「ゆずりん…?」
「……」
「……ゆ、ユズ?」
「……っ」
あ、正解だ。
猫がピクッと耳を立てるように、小さな反応を示した東雲柚鈴。
「じゃあ、東雲東雲…っと」
同じく書いていた自宅番号に電話をかけようとする。
が、
「待てよ」
携帯からかけたら、犯人ってすぐ分かられちゃうんじゃね?
てか、分かられちゃうよな。
うん…。
「ここら辺さぁ、公衆電話あったっけ」
「……」
……だよなぁ。
これから家に「金よこせ」って連絡するのに、電話がどこにあったか聞く俺が馬鹿だ。
「……ありますよ」
「えっ?」
「そこの角を向かって右に曲がり、突き当たりのところで左に行くと居酒屋があります。そこに公衆電話があります」
「えっ……あ、そう…」