捕まっちゃって、奪われて。
そしてまた、黙り込む。
なんなんだ…? この子、不思議でならねぇ……。
だって、誘拐されてんだよ?
幾ら俺がなよなよしてるからって、
幾らここが知ってる場所だからって、
君は誘拐されてんだぜ?
「……」
車を運転し、東雲柚鈴が言った道のとおり行くと、そこに居酒屋があって…公衆電話もあった。
「じゃ、待ってろよ」
「……」
頷きもせず、怖がりもせず。
ただ、まるで操り人形のように、くたっと力が抜けている。そんな感じ。
だけど、なんかこの子、逃げねえだろうなって。
なんとなく、思った。
「じゃ、コールしますかねー…」
受話器を持ち上げ、100円玉を入れる。
ただ、それだけの動作で、手が震える。
…そうだ。
俺、今……犯罪者になるんだ。